2014年3月18日火曜日

3月18日:大学院に入る人へ

来年度から大学院生が何名かやってきて、僕が直接関与する人もいます。僕の所属する講座では、ある程度の社会経験を積んだ人が大学院に入るシステムとなっていますが、医師としての社会経験と研究者に必要な常識は乖離していることもあり、あらかじめ知っておいて欲しいことを書き残します。

テクニック

グループにはコアになる確立された技術があり、必ず習得してもらわないといけません。ノウハウが蓄積されているので一見簡単そうに見えますが、どこでも教えてもらえるものとは違います。いわばラボの財産ですからそのつもりで教わってください。
新しい技術にトライすることもあります。そのいきさつは、1)いずれラボのみんなが出来るようになって欲しい技術を開発中、2)個別の研究のためにやらざるを得ない、の2つくらいでしょうか。1)について、かつては「熱心な個人」に依存したらよいと考えていましたが、今は、「全員でやる」方が効率がよいと考えています。というわけで、大学院入りたての人にも協力してもらいます。

追試
追試は重要です。他人の追試から実験は始まりますし、自分のデーターを公開したら追試されるのが前提です。

研究ノート
個別の実験について、必ずノートをつけてください。複数の実験に関わっていても、研究ノートは一冊の方が後の整理は容易です。研究ノートはそれを眺めれば追試できるような実験手順とその結果が記載されていることが期待されています。ノートは捨ててはいけません。

失敗
予定した結果が得られないことを失敗と定義するなら、臨床において失敗は許されない訳ですが、研究における失敗は許されています。小手先のフォローは不要ですが、なぜ失敗したのか分析できるようにしてください。これは適切な対照群を設定する工夫に関連します。

2014年3月10日月曜日

3月10日:術中覚醒、BIS、ETAC

今日の担当はH先生、BISとETAC(呼気吸入麻酔薬濃度)の術中覚醒予防効果を比較した前向き研究、少し前に発表されていて有名な論文です。
Prevention of intraoperative awareness in a high-risk surgical population. N Engl J Med. 2011 PubMed PMID: 21848460.
BISを40-60となるように麻酔した群と、ETACを0.7-1.3MACとなるよう麻酔した群で術中覚醒の頻度を比較。N=5413と参加患者数は大きいのだが、実際に術中覚醒と判断されたケースはBIS群=7、ETAC群=2。術中覚醒の疑いと診断されたケースはBIS群=19、ETAC群=8。両群間に有意差はなかった。
術中覚醒の診断は術後のインタビューなので、intraoperative awarenessというよりもawareness with recall(記憶の残存)と言った方がより正確ではある。

Anesthesia awareness and the bispectral index. N Engl J Med. 2008  PubMed PMID: 18337600.
この少し前に行われたトライアル。こちらでもBISの有益性は証明されていない。


Bispectral index monitoring to prevent awareness during anaesthesia: the B-Aware randomised controlled trial. Lancet. 2004 PMID: 15172773.
その前段。このトライアルではBISの効果が認められている。

術中覚醒は重篤な合併症だが頻度が低いので、多くの患者を集めても確実な結論には至りにくいということだろう。

2014年2月4日火曜日

2月4日:CVPはボリュームの指標となるか?

今日の勉強会はTS先生の論文抄読、CVPは輸液の指標となり得るかというテーマのシステマティックレビュー
Does central venous pressure predict fluid responsiveness? A systematic review of the literature and the tale of seven mares. Chest. 2008 PMID: 18628220.
独特な(?)価値観の教科書でファンの多いMarik先生のレビュー。輸液反応性(輸液負荷後に血圧や心拍出量などが増加するなど、身体的なメリットが認められること)を予測するツールとして、また、体液量の指標としてもCVPが全く役立たないことが示されている。CVPを指標として輸液負荷を行う場合、感度特異度を示すROCのAUCは0.56であり、「当たるか当たらないか1/2の確立」状態にある。

敗血症ガイドラインではCVPが輸液負荷の指標に使われているが、こういった批判を受け最新版では「動的パラメーター」の利用も推奨されている。動的パラメーターとはpartial leg rising testやstroke volume variationなどで、輸液反応性の予測ツールとしてはより正確性が高い。
「急性期には理想的なfluid statusというものは存在せず、輸液負荷によりメリットが生じうるかどうかを判断して輸液の指標とする」という考え方はこのレビューに限ったものではなく、そのような考え方が正しい輸液を行う上で重要なんだろうと思う。
参考までに、僕が以前学会で使ったスライドをのせておきます。


2014年1月24日金曜日

1月24日:Pain classics

久々にブログ名どおりの曜日に投稿します。
今月号のPain誌にPain Classicsという特集をはじめるというお知らせがのっています。

これまでにpublishされた痛み関連の論文あるいはテーマからインパクトの大きかったものをとりあげてreviewとして解説するという企画です。第一弾はgate theory。
とてもわかりやすく書いてあり、「麻酔関連領域で研究してる」レベルなら、研究対象が痛みであろうとなかろうとおすすめです。もちろん、痛みの研究や診療に興味のあるすべての人たちにもおすすめします。

2014年1月21日火曜日

1月21日:エスラックスの初期投与量と効果発現時間

今日の勉強会はTM先生の担当、Rapid sequence inductionを行うときの筋弛緩薬の選択と投与量による筋弛緩発現時間の違いについて調べた論文の抄読。
Comparison of rocuronium, succinylcholine, and vecuronium for rapid-sequence induction of anesthesia in adult patients. Anesthesiology. 1993  PMID: 7902034
エスラックス0.6/0.9/1.2 mg/Kgとベクロニウム1.0mg/Kgとサクシニルコリンを比較。TOFでモニターした筋弛緩薬発現時間はサクシニルコリン50秒に対してロクロニウム0.6では89秒、0.9では75秒、1.2では55秒。ベクロニウムでは144秒。効果持続時間はロクロニウム1.2で73分ととても長くなっている。
この論文では、ベクロニウムはRSIには不向き、ロクロニウムなら0.9または1.2がサクシニルコリンと同等という結果がでている。もっとも、最近発表されたコクランレビューではRSIに用いる筋弛緩薬としてエスラックスがサクシニルコリンよりも勝るポイントはなく、エスラックスを用いる場合は1.2mg/Kg投与しないとサクシニルコリンと同等の結果は得られないという結果が得られているようだ。
Rocuronium versus succinylcholine for rapid sequence induction intubation. Cochrane Database Syst Rev. 2008  PMID: 18425883.
ちなみにこのレビューはスガマデックスが発売される前のもの。エスラックス1.2mg/Kgとスガマデックス16mg/Kgの組み合わせがサクシニルコリンと同等の早さで筋弛緩効果を失わせることができるという論文があったように思う。

挿管操作時の筋弛緩効果を主観的に判定した結果は、すべての群で大きなかわりはない。効果を4段階で評価しているがこれが粗すぎるのだろうか。臨床的には筋弛緩なしで挿管することはありえるのでこのような評価方法では違いはないのかもしれない。ただし、挿管に伴う気道損傷は筋弛緩を用いた挿管で頻度が少ないので、せっかく筋弛緩薬を入れたなら効果が得られた段階で挿管操作に入った方がよいだろう。

2014年1月7日火曜日

1月7日:胃管のスムーズな入れ方、心臓手術における適切な輸血

前回の勉強会の紹介を忘れていました。
担当はTs先生、ファイバーで声門を観察しながら胃管を挿入し、喉頭のどの部位に胃管があたるのかを調べた論文の紹介。
Oro- and nasogastric tube passage in intubated patients: fiberoptic description of where they go at the laryngeal level and how to make them enter the esophagus. Anesthesiology. 1999 PMID: 10422939.
経口挿入で85%、経鼻挿入で68%が喉頭に当たらず通過。通過しない場合、梨状陥凹(46%)、披裂軟骨(26%)に当たっていた。
胃管の挿入は胃内容物をドレナージさせ誤嚥を予防するが、術後嗄声の原因となったりすることもあるので挿入時は一定の注意が必要と思う。特に披裂軟骨の部分に当たりやすいという指摘は周術期の披裂軟骨脱臼との関連を思わせて重要に思える。経食道心エコーのプローブ挿入でも同様の現象がみられるのだろうか。

今週はNz先生が担当、心臓手術周術期の適切な輸血についての総説の紹介
Blood Transfusions in Cardiac Surgery: Indications, Risks, and Conservation Strategies. Ann Thorac Surg. 2013 PMID: 24359936.
術前、術中および術後に貧血となった患者は予後が不良。輸血を行うと、短期的な生存率が上昇することはあるが、長期予後はむしろ悪化する可能性がある。Hb>7とHb>9or10を指標として輸血を行う場合、患者予後について両群に有意な差は生じない。
という内容。貧血患者が予後不良である側面には酸素運搬能が不足しているという面以外に消耗性疾患や出血性疾患を有していて耐術能が低下しているという面がある。輸血については酸素運搬能は改善するがTRALIや感染のリスクがある。生理的指標だけを見て輸血することが最大の効果を生むとは限らないという結論。

そんなわけで今年もよろしくお願いします。

2013年12月5日木曜日

12月3日:論文検索のノウハウ

今週の勉強会は僕が担当、論文検索のノウハウについてプレゼンした。
キーワードの設定の仕方、Mesh termの意味、Single citation macher、pubmedIDなどについて解説した。あとは学術雑誌からtable of contentsをメールしてもらう方法も伝授。ちょっと時間が押したので消化不良だったかもしれません。